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オールドコーヒーを語ろう

 貯蔵(エージング)のところでも書いているが、今いちどオールドコーヒーについて書いてみようと思う。
 ランブルに来たことのある方には分かると思うが、メニューに★の付いているストレートコーヒーがある。これらがオールドコーヒーで、10年以上寝かせた豆である。一方、★のないコーヒーはニュークロップなのかと言うとそうではない。9年寝かせたコーヒーでも★は付けないだけなのである。
 何年寝かせればオールドコーヒーになるという定義も公の決まりも何もない。1年でも2年でも、たった半年でも寝かせればオールドコーヒーだと言っている人もいる。
 昔、IBC(ブラジルコーヒー院)のクラシフィカドール(コーヒー鑑定士)を名乗る人が私の店を訪ねてきたことがある。鑑定士といったら相当な権威で、コーヒーの味覚には絶大な自信を持っている。たまたまエージングの話題になったときに、私が「珈琲豆を10年、15年寝かす」と話をしたら彼が哀れむような目つきで「1年経ったらコーヒーは駄目だ」と言う。私が「そんなことはない、ものによったら長期寝かしたほうがいい豆だってある」と重ねて言うと、彼は「私はクラシフィカドールだ。その私が自信を持って断言しているのだ。」と高飛車な態度に出てきた。
 エージングに関してはいろいろな意見がある。それぞれ己の経験や味覚への自信から出た言葉なのだろうが、私にも私なりの経験があることは貯蔵(エージング)で書いているとおりである。ある人は「20年も経ったら味はスカスカだ」と言う。確かにそうした珈琲豆のほうが多いかもしれない。でも、その人は20年目で味が変わってくるような珈琲豆に出会っていないのであろう。確かにそういう出会いは偶然かもしれないが、私はそういう珈琲豆に多く出会っているから「1年経ったらコーヒーは駄目だ」と言う言葉がにわかには信じられないのだ。

1979年から寝かせてあるコロンビアジャイアント

 私の現在の悩みは良質の珈琲豆が少ないことだ。
 私が昔の豆は良かったという話をすると、今でも良質の豆はたくさんありますよという業者もいる。でも、実際に焙煎してみると期待は見事に裏切られる。これの繰り返しである。そもそも、豆に個性がない。昔のコロンビアには浅く煎ろうが、深く煎ろうがすぐにわかるほどの個性のある豆があった。だから焙煎する側も面白いし、お客さんにしたってコーヒーの多様な味わいを楽しむことができた。ところが経済効率優先の名の下に大量生産のための品種改良や交配が繰り返され、豆の個性がなくなってしまったのであろう。